道南ひきこもり家族交流会「あさがお」ニュースレター第113号:2016年3月

道南ひきこもり家族交流会「あさがお」ニュースレター第113号:2016年3月

【例会】時間:午後2時~4時 会場:函館市総合保健センター2階会議室
2月14日 3月13日 4月10日 5月8日 6月12日 7月10日
 
樹陽のたより(ひきこもりを体験した当事者の集い)も、函館市総合保健センター(第2健康指導室)で、11時~13時に開催します。

※4月から新年度ですので、会員継続にご協力をお願いいたします!(^^)!

年会費千円を納入いただきますと隔月のニュースレターをお送りし、例会参加費が無料となります。公的助成を受けず、会費や寄付のみで運営しておりますので、ご家族や当事者以外にも関心をお持ちの方々に会員になっていただき、活動をご支援いただければ幸いです。
入会継続される方は、同封の振込用紙をご利用いただくか、例会時に納入をお願いいたします。

口座番号:02770-2-37078 口座名:道南家族交流会


※Fonte(全国不登校新聞社発行)で「ひきこもりの生涯設計~サバイバルプランの立て方」の連載が始まりましたので記事コピーを同封します。例会では毎回「親亡き後」の不安が語られます。

過度な不安はご家族の状況をさらに悪化させますので留意が必要ですが、具体的な知識や対処方法などを考えておくことも合わせて大事なことだと考え紹介しました。

※『ひきこもり「活躍の場は必ずある」』『岐路に立つ自主夜間中学 遠友塾』の道新記事や、『ヨリドコロ』チラシ(裏面に函館新聞の紹介記事)も同封しました。いろいろな社会資源を活用し、ご家族だけで抱え込まないことも大切だと思います。また、北方ジャーナルの昨年8月号に、就労支援について野村のインタビュー記事が掲載されましたのでご紹介します。


 
 昨年末までは暖冬か?と思えるほど暖かく雪の少ない楽な冬という感じがしていましたが、やはり北海道の冬は甘くありません。平成28年最初の1月10日例会は、寒い雪の中を21名の参加者が集いました。2月14日の例会も16名が参加、終了後の新年会はインフル流行で参加者予定者が減りましたが、「樹陽のたより」メンバーも交え9名で大いに語り合いました。

「樹陽のたより」は、サポーターも含め1月例会は8名、2月例会は9名が参加、ひきこもりを体験した当事者の貴重な交流の場として継続されています。

昨年12月に田中敦さんのご講演の中で、「例会では5人ぐらいのグループに分かれて、より多くの時間を参加者お一人おひとりの語りに使えるようにした方がよい」とおっしゃっていました。このご意見を取り入れて、1月・2月は特にグループの話し合う話題を決めたりせずに3グループに分かれてそれぞれの話したいことを話し合いました。その中からいくつか話題に上ったお話をお伝えします。


【家族内の自然な会話に心がけることから】

参加者の中にはこの「あさがお」の例会に参加していること自体を家族に内緒にしている方もいらっしゃいます。そうしないとならないほど、ご家族が「ひきこもり」という言葉に敏感であったり、拒否感を持っている状況があって、参加者はできれば現実問題として家族皆で現状を話し合っていきたいと希望していても、とても家庭内で話題にできない状況に焦りと悩みを大きくしています。

ですから、何とか社会と接点を持たせたいとか、検診を受けてみるなどの具体的段階に進めたいと思っても、話題を出すことでかえって家族関係を悪くしてしまうため、ぐっと我慢をしているとのこと。気が付けば、非常にご自分の発する言葉に気を使ってしまうあまり、朝の「おはよう」さえ言わない状況があるという悪循環を招いていました。

お子さんが実際に家庭内で行っている掃除などの仕事に対しての感謝の言葉も伝えていいのかどうか迷うとのことで、気を使う状況がすべての言動に大きく影響を与えていることを実感するお話でした。

5~6人のグループでの話し合いは、メンバーとの距離が近いこともあって、すっと今の話題に入っていって意見を言えるというメリットがありました。例えば、挨拶をしない状況に対しては、他のメンバーから「おはよう」は待つのではなく自分から発したほうが良いとの意見が出されるなど、課題が共有でき、意見交換が自由にできていました。

これに関連して、参加者皆さんが感じていることとして「気を使う」・「言葉を選ぶ」・「機嫌や様子を見る」などが共通意見として話題に上りました。皆さんは今以上に家庭内でも孤立したり、会話がなくなることが心配で気を使っていらっしゃることが伝わります。

【「甘え」は大切な関係性を育む】

 これだけエネルギーを使って向き合ってきているのに親の心を突き刺すような言葉や態度が返ってくると、親の思いが伝わっていないようで大きな空しさや悲しみが襲ってきて、どう対応したら良いのかわからなくなると思います。

 お話を伺っていてふと脳裏に浮かんできたのが、精神分析家・土居健郎さんの名著『甘えの構造』の「甘え理論」でした。英語にはない「甘え」という言葉が、心理学のなかでも「Amae」として世界的に通用するようになったことでも有名なのですが、幼い子どもが自分と母親が分離した別々の存在であると気づきながら、どこかでつながっているという感覚(幻想)をもつことが大切であり、この感覚こそが「甘え」なのだと表現しています。

甘えが成立していると、母親と一心同体でないと知りつつ「どこかでわかってもらえる、つながっている」という感覚を持つことができ、孤立無援の恐怖や見捨てられる不安におびやかされずにいられる(自分は特別な存在である)という感覚でもあります。

この「甘え」は成人してからのちも常に人の心に存在しています。本来非言語的なものなので、いちいち言葉にしなければならないような相手には甘えられないのであり、それは情けなく腹立たしいことになります。素直に甘えられないとき、甘えは「すねる」「ひがむ」「恨む」といった態度にあらわれ、ふてくされたり、やけくそになったりします。

自分の甘えのあてが外れて、自分が不当に扱われたと曲解するのが「ひがみ」であり、自分から素直に甘えることをせず、相手にあえて背を向けるような態度をとるのが「ひねくれ」であり、いずれもそこには相手に気づいてほしいという甘えがひそんでいると土居先生はおっしゃいます。

「恨む」のは甘えが拒絶されたとして相手に敵意を向け、からみつくようなところがあるとのこと。これら屈折した甘えには、相手に対してネガティブな態度をとりながら、その陰に察してほしい気持ち(甘え)が透けて見えるところあるのが特徴とのこと。今見える子どもさんからの言動の陰には、やはりわかってほしいという思いがあるのだと思われます。

【「正論」よりも「共感」を】

また、自分の気持ちに正直で相手がどう感じるかを思い描くことが苦手な特性を持っている場合も、相手を傷つける言動なのかどうかという視点を持たないため、周りの人間には辛い言葉を投げかけられて悲しい思いをすることもあります。親としてはそれらの言葉に対してついつい「でもね、・・・」と正論で反論したり釈明したくなりますね。

今回参加された障害者就労移行支援事業所「Ponte」施設長の森山晋悟さんは、そういう話に対して「その発想は面白いね」とか「~と感じるんだね」とまずは認めることを最優先して話を聞くと、次第に相手に対して共感的になってくるように思う体験をされているとのこと。

正論でぶつかる前にまずは認めることが何より大切であり、それを経てから「社会に君の発想をぶつけると折り合いをつけるのが大変かもしれない」というように一緒に考えていけるのではないかとお話しされました。
子どもと向き合って今の状況をすべて受け止めて認めるのは難しい点も多々あるかと思いますが、まずは今何をどう考えているかを批判なしに聞いていくことがすべての始まりかもしれないと考えさせられる話し合いとなりました。

事務局:函館渡辺病院医療福祉科(森・越野)
電話:0138-59-4198 FAX:59-2507

野村俊幸(社会福祉士・精神保健福祉士)
電話:090-6261-6984 メール:tnomura@sea.ncv.ne.jp