道南ひきこもり家族交流会「あさがお」ニュースレター第110号:2015年11月

道南ひきこもり家族交流会「あさがお」ニュースレター第110号:2015年11月
【例会】時間:午後2時~4時 会場:函館市総合保健センター2階会議室

11月8日 12月13日  2016年1月10日 2月14日  3月13日

樹陽のたより(ひきこもりを体験した当事者の集い)も、函館市総合保健センター(第2健康指導室)で、11時~13時に開催します。

※素晴らしい2冊の本が出版されました。詳しくは同封の紹介チラシをご覧ください。
 

「アスペルガーだからこそ私は私」 白崎やよい・白崎花代 著 生活書院
「ひきこもる心のケア ひきこもり経験者が聞く10のインタビュー」 杉本賢治 編 世界思想社
※「会員家族の相互訪問・当事者による家庭訪問」「ひきこもっているお子さんへ葉書を送る取り組み」も引き続き継続します。
また、「レターポストフレンド相談ネットワーク」も手紙(絵葉書)をお届けする事業を開始しました。ご希望の方、関心をお持ちの方は、野村までご一報ください。

9月13日は150回目の例会でした。ここまで続けてこられたのは会員の皆さま、支援してくださった関係者のおかげです。心から感謝申し上げます。

この記念すべき例会には21名(当事者・家族名15名、協力者6名)、10月11日の例会には27名(当事者・家族21名、協力者8名)と多数の方が参加し、杉本賢治さんのお話もうかがうことができました。会の重要性をあらためて再認識しています。

樹陽のたよりの例会も、9月13日は9名、10月13日も13名と多数の方が参加しました。
 

【障害者雇用の体験者のお話しから】

秋を感じ始めた季節になりました。9月例会は雨模様のすぐれないお天気でしたが、当事者の方々や新しい参加者の方々も含めて多くの参加者が集いました。

今回は障害者就労移行支援事業所「Ponte<ぽんて>」施設長の森山晋悟さんの参加もあり、障害者の一般就労に向けて「個々の方々の状況に合わせての対応を充実させていきたい」との事業所の目指す支援について説明をいただきました。このような資源や情報が増えていくことは喜ばしいことと思います。

また、久しぶりに参加した当事者の方からも現在の就業状況についての報告がありました。障害者雇用枠での就職には個人の能力を反映するような仕事を得ることが難しい面もあるようで、この方の場合は、お金や対人といった責任能力を問われるものは与えられないとのことでした。

ですから、何年たっても掃除のような簡単な仕事しかさせてもらえないという現実の壁があって、仕事への意欲を維持するのが難しいとのお話でした。

<ポンテ>の森山さんによるとこの問題は職場の意識によっても違いがあるようで、改善されるよう祈るばかりですが、改善を信じてめげずに頑張って続けていきたいというご本人の思いに、話を聞いている側の人間が勇気づけられるような状況でした。

【子どもが一時的にでも働き始めたら…】

 話し合いは、ひきこもり期間3年をめどにそれ以上か未満かで大きくグループを分けて進めていきました。3年以上のグループでは、知り合いの仕事の手伝いに毎日通っている息子さんの様子が報告されました。

暑いさなかには「無理に行かなくていいよ」「休むといいよ」と気遣いの言葉をかけてくださるお父さんの温かさに力をもらって頑張っているご本人の様子が伝わってきました。

まだ仕事に出かける段階まで行っていないご家族からは、よく頑張っているとの意見が寄せられましたが、こちらのご家族としては仕事が臨時的なもになので、今後に向けて考えていかねばならないことを伝えるべきかどうかで思案中でした。

これを聞いていた当事者の方から「息子さんは友達がいますか?」という質問が出ました。この質問の意図は何かと皆が考え始めていると、「友人がいればただそれだけで自分を認めてもらえると考えることができるけれど、一人でいる場合は自分を認めてくれる人がいないので、家族が認めてくれたらいいと思う」とのことでした。

今よりも先のことを次に次にと家族が進めて自分に期待されると、今の自分を見てもらえていない感じがして自信を失うと思うので、周りが先へ先へと進めるのはプレッシャーでしかないとの意見でした。できていることをしっかり認めることが自信につながる第一歩と考えられますね。当事者の方の話にはご自分の心の旅がかぶさって語られるので聞く者の心に響くものが大きいです。

【感謝の気持ちは素直に言葉にしたい】

皆さんのお話の最初に語られる言葉として、「以前と何も変わっていない。まったく変化がない。」をよく耳にします。たとえば、「まったく変化がなく昼夜逆転状態です。」といった感じですが、よく伺っていくと少し早く起きるようになったり、家事を手伝ったりする様子が語られていきます。

大きな変化と受け取れるそれらの動きについて「何か声をかけていますか?」と伺いましたが、「別に何も言わない。」との答えが返ってきました。

それは気づいていないからというよりは余計なことを言うことで気分を悪くするのではないかという戸惑いや気遣いからの迷いのようでした。タイミングが難しいというのです。

この難しさについても当事者の方から意見が寄せられました。その方のご経験では、ひきこもっているときにはとても大きな罪悪感があって、親は怒っているのではないか?という気がして、家事くらいはしないとまずいか・・・と思って慣れないご飯づくりなどをしたそうです。

その時にお母さんが仕事から帰ってきて、「助かる!」と言われた時は、ホッとするのと同時にやりがいを感じたそうです。何も言われないと怒っているのかと心配するので、どうか「ありがとう」の一言でもいいから声をかけてもらいたいとのことでした。

 親は子どもがどう感じるかが見えずに、動けないこともあるけれど、嬉しいことやありがたいことは素直に言葉に出していく方が相手にストレートに届くのかもしれません。うそを言っているのでも、お世辞を言うのでもないのですから、心に感じた感謝は言葉に出したほうが良いようですね。本当のことなので、責められることではないと思われます。

【障害年金受給をめぐる体験から】

親として病院など、誰かと繋がってほしいと思うのは、現状を打開する一歩になる可能性があるからです。

それが社会参加という形になるのか、まずは病院との繋がりになるのかは状況によりますが、それと同時に障害者年金を受給するなどの方法も知っておきたいということで、事務局の精神保健福祉士さんに申請や受給などを詳しく説明していただきました。

年金が初診時にどの年金(厚生・共済・国民)に加入していたかによって申請が違うなど大変に勉強になりました。

この年金に関しては、実際に受給している方々から、最初は精神障害者として認定されて手帳をもらうことに抵抗があったとか、「なぜ私が?」といった戸惑いもあって悩んだけれど、実際に申請して受給できるようになってからは、この先に安心がもたらされた思いになって申請して本当に良かったとのこと。

また、若い人がもらっていいのかと思っていたけれど、同じ立場の人が受給していることを聞いて自分ももらっていいのだと思ったとのお話でした。受給しながらお仕事もされているので、それらの収入で生活しているとのことでした。

また、ある親御さんからも、息子さんがこの年金のことをネットなどの情報で得ていて、自分の問題として考えていたことが語られました。一人で模索して今後のことを考えているのだと実感するお話しでした。

何も変わらずに日が過ぎていっているように見えることも、このように少しずつの変化が確実に積み重ねられていることを考えさせられる話し合いとなりました。またの例会でも、皆でお互いの状況を共有して気付きあっていきたいものですね!

【文責】副代表・大杉ユリ子(臨床心理士)


事務局:函館渡辺病院医療福祉科(森・越野) 電話:0138-59-4198 FAX:59-2507
   野村俊幸(社会福祉士・精神保健福祉士)090-6261-6984 tnomura@sea.ncv.ne.jp
年会費千円を納入いただきますと隔月のニュースレターをお送りし、例会参加費が無料となります。当会は公的助成を受けず、会費や寄付のみで運営しておりますので、ご家族や当事者以外にもこのようなテーマに関心をお持ちの方々に会員になっていただき、活動をご支援いただければ幸いです。
口座番号:02770−2−37078 口座名:道南家族交流会